 |
 |
|
優れた書というのは、自由に書いて、変化に富む書である。自由に書くということは、書法を無視して書くことではない。
書法をよく学び、これを消化し、書法に拘束されることなく、思いのままに書くことをいうのである。そして、自然に生じた変化がほんとうの変化である。わざと作り出した変化は、変化といえない。
それ故、正しい書法を正しく習得すると、書は、自由に書くことができる。 そこで、書法学習の第一歩は、筆の構造を理解し、毛筆の弾性の機能を知ることである。すなわち、筆に無理につかわないようにすることである。
この筆法を「蔵鋒の筆法」といい、古くから中国から伝えられるもので、中鋒とも呼ばれる。蔵鋒は、筆心が、筆画の画中を、通るように運筆し、筆鋒を起こし、或いは、開き、且つ、まとめ整える筆法である。
この蔵鋒を習得すると、楷書の構成の運筆も、草書の円滑な使転の運筆も、無理なく運ぶことが出来る。 楷書と草書とは、一見字形は異なるが、筆法の基本からみれば、みな同じである。
楷書は、点画によって組み立てられているが、草書は、使転(ながれ)によって形成される。
草書を学ぶには、まず、その使転を把握することが肝要である。また、その使転を理解するには、一字を構成するすべての画を一つのものとして、正確にとらえなければならない。
このような学習は、楷・行・草・篆・隷・かな、いずれの書体にも欠くことのできないものである。
|
(乾長江書論より) |
 |
|
 |
|
|
 |